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はじめの人は詩によって語った

 人は言葉の獲得とともに、象徴的な思考ができるようになりました。つまりは、言葉を詩的に利用する能力を手に入れ、詩によって語ったのです。想像力の飛躍は、一つの物事にいくつものイメージを紐づけます。豊かな想像の中では、異なる世界を自由に繋ぎ、新しい意味をも創造できるようになりました。

 かつて、兎は煙になって月に上り、燕は水の中で冬を越しました。孤独な詩人の心では犬が吠えています。

 象徴・寓意としての動物。神話や伝承、物語、表現の中の動物。私の作品には多くの動物が登場します。動物そのものというより、人間が長い時間を掛けて作り上げてきた、動物のイメージをモチーフにしていると言った方がいいでしょう。私がつくることは、人の思考の営みを形にし、現実に繋ぎとめる行為でもあります。

 そうしたモチーフとじっくり向き合う上で、土の表面にこつこつと痕跡を刻んでいく長い時間は、いつの間にか欠かせないものになりました。やきものが虚ろだからこそ、そこにこだわります。形と色が同時に立ち現れ、部分が次第に全体になって見えてくる。その小さな感動の繰り返しが、私自身の認識する世界を少しずつ広げてくれるように思えるのです。


2019年7月

林 麻依子

 

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