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たとえば、うつろな空に

 うつわの中身は空っぽだ。

 私のつくるやきものの動物たちが空虚なものだったと、はたと気付いたとき、その空洞は意味を持って現れました。虚ろの中には創造の契機が潜んでいるように思えたのです。

 空で秘めやかに笑う月は、山の輪郭をはっきりと浮かび上がらせます。地を這う山は空に憧れ、仰ぎ見ました。隠れて月を照らしていた太陽が再び目覚めて顔を見せれば、強い光が世界を覆うでしょう。光の裏側には影が生まれ、そこにはぽっかりと空虚が口を広げるのです。象徴的な動物たちは、情景を描きながら、その空洞の中に物語を抱いています。

 手捻りで立ち上がってゆく形には、表と裏が同時に生じます。光と影はせめぎ合いながら、量感を持ち始め、それぞれがひとつの形へと受け入れられていくのです。虚ろから生まれた動物たちは、その狭間に立ち、あらゆる対比を行き来します。そんな動物たちのまなざしが、対峙する私たち人間の存在を認め、心を映し出すことを願って、私は静かに粘土と向き合っています。


2014年4月

林 麻依子

たとえば、うつろな空に: テキスト
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